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ローエングリン・・・バイロイト音楽祭 [TV放送]

<出演>
クラウス・フロリアン・フォークト
ゲオルク・ツェッペンフェルト
アンネッテ・ダッシュ
トマス・トマソン
ペトラ・ラング
ヨン・サミュエル
シュテファン・ハイバッハ
ウィレム・ファン・デル・ヘイデン
ライナー・ツァウン
クリスティアン・チェレビエフ

(合唱)バイロイト祝祭合唱団
(管弦楽)バイロイト祝祭管弦楽団
(指 揮)アンドリス・ネルソンス
<演出>ハンス・ノイエンフェルス          

深夜の生放送にもかかわらず、時差をひきずっているため、目パッチリで最後まで集中して楽しめ、放送でこれほど堪能させてもらえるとは思ってませんでした。

音楽的に聴き応えあるもので、近年散見されるバイロイトは質が落ちたなどという評も、否!
バイロイト!さすがではありませんか!という印象を受けました。

音楽(演奏、歌)さえ良ければ、演出に関してはどんなに古臭くてベタで衣装だけ豪華な学芸会でも、斬新で突拍子もないヘンチクリンなものでも構わないというのが基本姿勢です。
この演出は主要登場人物を際立たせ、その歌、そしてコーラスの魅力をも引き出すのに有効な手法が取られ、視覚的にも色彩美に溢れた秀作だと思います。
ただ説明過多というところがあり、最大の問題は最後ですが、この最後の胎児登場についても個人的には悲観的には捉えてません。

まず主要登場人物が演技するのに広い空間が取られ、演技が決められていたとしても歌に合わせて大きく演技ができるので、それぞれが歌と演技に集中して感情移入しやすく、歌手が真に迫る歌と演技で魅了してくれた要因の一つであろうと思います。
また群集をネズミにして個性をなくし、その他大勢にしてしまうことで、主要登場人物を鮮明に浮かび上がらせ、一方でコーラスはその視覚的統一感により、より力強く響いてくる効果となっています。
その他大勢は没個性の方が集団心理を見出しやすく、一群の中からちょっと違った行動をするものがいたりすると、いるいるこういうヤツ・・・といった人間社会の一面をのぞかせます。

特に背番号79のネズミ・・・こいつがチャッカリもののワケワカラン悪いヤッチャ!
王様に襲い掛かってしょっぴかれたにもかかわらず、袖の下かコネか知らんが・・・
ちゃっかりエルザを法廷まで連れて行くときは後ろから弓矢で脅している!?!
その後ローエングリンの白鳥の船を運んできたり!?!
はたまたテルラムントの手伝いしちゃったりする・・・・首突っ込みたがりのお調子者メ!
ネズミの背番号はドイツの税務識別番号を意味しているのでしょう。
ネズミの着ぐるみが可愛く見えたり、恐くも見えたり、妙に背中で語っている時もあったりでよく出来てます。

衣装も素敵で特に「白鳥の湖」のイメージの衣装は美しい。

尚、タイトルロールを演じているフォークトがシャツ一枚にもかかわらず、汗だくになっているのを見て、バイロイトで豪華な衣装で古風な演出を行うのは今や無理だろうと思いました。
バイロイトは空調がないと思いますが、音響を変えてしまう可能性のある改修は行わないと思うので、
古風な演出復帰を願う方はおおいに地球温暖化防止活動を行いましょう。
ここで以前もご紹介したことがありますが、古典的美しさを求める方はドレスデンのローエングリンのヴィデオクリップをどうぞ→こちら
このような演出をバイロイトで行うと歌手さんはフラフラ、熱中症になってしまうかも?です。

フォークトは想像していたよりもずっと人間味溢れるローエングリンでした。
今までジュネーヴ、バルセロナといずれも「パルジファル」で聴いたわけですが、ジュネーヴでは天井桟敷鑑賞で紗幕が終始降りたままだったので輝きに満ちた声に圧倒されましたが、演技、表情などは良くわからず・・・
バルセロナは人間の話に置き換えられ、2幕終了まで少年だったせいかジュネーヴとは全く違ったパルジファルで表情や演技はどちらかというと不器用な印象をうけました。
しかし今回は歌の表現、演技、共に素晴らしく、そういえば不器用な印象は少年を演じていたわけで、それはそれで正しく演じていたのだろうと思い直してます。
プロですからコンセプトに応じて歌い方や演じ方を変えるのは当たり前といえば当たり前ですが、これほど印象を変えることができる人とは思ってませんでした。
苦悩する不思議くん(フォークト)、特に3幕は圧巻!
名乗りの歌も良かったですが、Mein lieber Schwan・・・・・・(泣)
人間味溢れるローエングリンでしたが、その声の持つ神聖な響きは思わず両手を合わせて拝みたくなる・・・・2幕最後で民衆が拝んでましたが、凄く理解できます。
来年来日公演はどういったローエングリンになるか?演出によって今回とは違った印象になる可能性は大いにありますが、その声の持つ神聖な響きできっと魅了させてくれるでしょう。

ダッシュは目鼻立ちがくっきりとしているので舞台栄えします。
白鳥の騎士が現れたときの表情がなんとも愛らしい。
実は2008年ザルツのドンジョでドンナアンナ役で歌っていたのを映像で観たばかり、その時は少々固い印象を受けましたが今回はしっかりとに役に入り込み、ずっと良い印象を受けました。

脇役では王のツェッペンフェルトが印象的。
社会が政情不安であろうことをうかがわせる疲労感を漂わせながらも、しっかりと威厳は保ち続けようとする姿勢・・・歌も演技も好演です。

オルトルート役のラングは容姿がかわいらしいのですが、ネズミの国ではそれほど違和感なく、かわいらしい魔女もありとは思えました。
個人的には少々この役には声が細いような気はしましたが、表情などその演技は見事です。

テルラムント役のラジライネンは急な代役のようでしたが、そんなことは感じさせないほど馴染んでました。

カーテンコールでのフォークトに対する賞賛が凄すきて・・・
その後登場するネルソンスがオマケのように^^;
放送だと演奏については臨場感がないのでなんとも言えないところではありますが、
歌手もコーラスも素晴らしかったのはやはり演奏が良かったからでしょう。

最後に問題のゴットフリートが胎児として登場する最後の場面について・・・
なんてこった!さすがノイエンフェルス・・・とは思いました。
しかし、その後解説の方が
お世継ぎが現れてもちっとも喜ばしくない・・・とのコメントに・・・
そうだろうか?と疑問が・・・・・。

未熟児で生まれたとしても愛情を持たない親がいるでしょうか?
確かにこの話の場合は少年が胎児となって現れてしまったのですからショックは大きく、希望がないように見えます。

しかし、この未熟児は自分の足でしっかりと立ち上がり、へその緒を自ら断ち切る生命力に溢れていたではありませんか!
ローエングリンは舞台後方に去るのではなく、まっすぐ前を向き、前へ歩んできました。
彼はブラパントの民に試練を残しました。
でも彼は信じているのです。
民が試練を乗り越えられることを!

「あとせめて1年・・・死んだと思っていたあなたの弟君が帰ってきたはずなのに。」
未熟児で現れることに無理はないでしょう。

外見で判断してはいけない・・・
目をそむけたくなるような胎児でも、やがて立派に成長するであろう希望を・・・
ローエングリンが前方に歩むことで伝えているのだと思いました。

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